Seafarer

 Martha Cohen Theatreという小さめの劇場でのシーズンオープニングの劇は「Seafarer」という代名の物語だった。

 アイルランドが舞台で、5人の男性がクリスマスの日に集まってくり広がる人間ドラマは、とってもヨーロッパのからっと晴れない、でも哀愁のあるような後味だった。

 パンフレットの表紙になっている人は、カナダ人のTVや映画にも出る有名な男優でPaul Gross という人。題名とこの俳優さんが宣伝になっていたことは分かっていたけれど、いまいちどういう物語か全く把握せずに会場へ。入ったとたんにアイリッシュバーの雰囲気でデコレーションされていた。

  それぞれのキャラクターが、こういう人いるいるとうなずける、個性あふれる男性陣。アイルランドと言えば飲まなくては始まらない。ビールは絶対本物だと思うから、よく飲んでいるなあというステージだった。これが夜の講演ならいいけれど、日曜の昼間から飲まなくてはならないというのはきつくないのか、はたまたうれしいことなのか、その辺の真相は分からないけれど、まあよく飲んでいた。

 舞台はハーキン兄弟の家。兄のリチャードは視力を失っているが強気というかまあ陽気で、弟のシャーキーにすべてをやらせ、シャーキーがまるで家政婦のよう。それというのも、家自体はリチャードの物で、シャーキーは職についていないようだった。そこに太って飲んだくれの友人アイバンが2階から階段を滑り落ちるように登場。リチャードと二人で酒好きで、シャーキーがちょっと2階に行ったすきにお酒を探して飲みだす。このメンツに追加して、友人のニッキーがクリスマスの夜に招待される。ニッキーはミスターロックハートという、新たな顔ぶれを連れてやってきた。

 ミスターロックハートとシャーキーは、実は過去に面識があって、いやな過去を思い出させれる。酔っぱらいながらカードのかけ事が5人で始まり、兄のリチャードとシャーキーの間にも、今までのうっ憤が噴出して、これっきりだとシャーキーが出ていきそうになる。最後は、それぞれの「家」に帰っていく。思いもかけずリチャードがクリスマスツリーの下に隠していたものが、シャーキーへの携帯電話のプレゼントだったことから、二人とも持ちつ持たれつの関係と言う事を認める。Seafarerというのは、ある名の知らない人の詩で、遭難した船でたどり着いた岩島で、一人でこの世を去らなくてはいけないという恐怖を言っているらしい。「誰も一人ではいきたくない」という、人間ならだれもが持っている恐怖が物語の裏にあり、結局今いる人たちで助け合っていくしかないんだ、という感じのメッセージだった。

 女性が一切いない劇で、アイリッシュのバー的イメージがとてもある、どこか懐かしいような、笑いの多い、あったかな劇だった。11月10日まで続くこの劇。とってもとってもおすすめ。

 

 また一週間💛