世界の緊張:Tension Of The World

 だいぶ木々が色とりどりになってきて(とはいっても、主に黄色で、黄緑と緑が混じっているので色とりどりと言ってみたのだけれど)、ちょっと雨風が強い日でもあればかなり散ってきた。早いんだなー、ここから。

 昨日から、中近東がまた過激化して、何よりも政治に興味がある我がパートナーと一緒にいるので、いやでも政治に無関心な私の耳に情報が入る。

 そしてやっぱり主流のメディアでの放送内容と、そうでないほうの情報のニュアンスがとても違うのには驚くし、私が説明できる範囲ではないので括約する。とにかく、殺されてしまったハサンナスララ氏は、アジア人やウエスタン諸国ではあまり知られていない(特に政治に興味のない一般市民には)かもしれないし、私も全くというほど知らない方なのだけれど、イスラム諸国ではとても人気の人だったという。たぶん、現在のローマ法王を知らない人が少ないように、そして、彼が亡くなった時にはとても悲しいと思えるように、アラブやイスラムの諸国ではハサンナスララ氏がそういう人気のある存在だったようだ。

 レバノンのニュースキャスターの女性は涙をこらえてこのニュースを放送している映像が流れた。私だって、別に個人的にとても応援していたわけでもない阿部元首相がなくなったときはショックだったから、わかる気はする。ダーリンのお姉さんの一人は、ナスララ氏が大好きだったと言う事で、「もし自分が犠牲になって彼が生き残れたならそうした」と悲しみの声でボイスメールをダーリンに残したという。

 それにしてもメディアの力は大きいと思う。私たちは好もうと好まざろうと、主流のメディアでよく見る人に対しては、ある種の愛着がわくし、その放送のされ方によって、悪意を持ちにくいから、そういう人が亡くなったと聞いたら、全く関係ない日本国民であっても「え」と思うし、なんだか悲しいと思うだろう。一方で、気づけば戦争をしている国だから「危ない」というイメージが先につき、あまり多くの情報が流されないし、当の本人もそういう努力をしないと言う事から誤解されたままで通ってきた国々、そしてその国のリーダー達というのがいる。後者の方に関してだが、その国に関しての専門家や研究者、作家などが日本にもいた(そして今もいるのだろう)と言う事にとても驚き、そして感銘を受ける。日本人のアメリカやヨーロッパ以外の諸国に向けた好奇心に。

 と言いながら、「文学」に関しては欧米諸国(ロシアも入れていいと思うけれど)が優れていて、多くの作品があるために、どうしてもそちら方面を読んでしまうのはしょうがない。文学がその国の文化の理解をするのを助けてくれて、想像力や包容力を養ってくれるとすれば、日本もやっとちょっと追いついてきた感じだろうか。昔は日本というと、「ソニー」「トヨタ」「キャノン」が頭をよぎる外国人が多かったのに比べて、今は野球好きであれば「大谷選手」、手っ取り早く知られる子供の分野で「ポケモン」、批判も皮肉も込められて取り上げられる「コンマリメソッド」など、ちょっとカルチャー寄りになってきた。この三つで一番知られているとすれば「ポケモン」だろうけれど、文化国日本、いいじゃなーいと思ってしまう。

 それでも実際、これほど噂になている真田広之が主演の「将軍」映画を、好んで見て知っているという人が、この町で何人いるかは疑問だ。日本に関してはまだまだいろんな誤解があると思う。移民が多いカルガリーだけれど、この辺はアングロサクソンの教会に通う人々のコミュニティーも多いし、いまだに「日本ではクリスマスはあるの」と聞かれたりする。大きな都市での「日本人」の理解や「日本」の知識というのは中国や韓国のそれと区別されているかもしれないが、そうでない場所では、どれだけ「アジア人で同じ種類」というくくりにされているだけの認識のされ方がまだまだ主流だろう、と、こんな小さな町にいるといつも感じる。

 今思い出した。以前職場で朝っぱらから私たちのオフィスに来て、「夕べ日本のホラー映画をNetflixで見て眠れなかったの。そうそう、あなたにそっくりな子がでてたわ」と言われた。どれだけ怖かったかを人にシェアしなければいられない、そうすることで少し楽になるとでも言うように、全く迷惑な朝一発目の「ふり」だと思ったけれど、日本の映画への興味なんて、そんなところで、「すごく怖そうで、怖いもの見たさに見ちゃった」というようなものだろう。「日本の文化を知りたくて」見たわけでもない。

 話は大幅にそれたけれど、戦争が早く終わらないかなと願う。少なくても文化の面で、いろいろな国を知り理解できたらいいけれど、やっぱり好きな傾向に偏っている自分も認める。やれやれ。

 また一週間💛