人の奥深さ:Depth of Insight

 写真はまたしても、ほんっとに時々まだ雪が降って、積もって、それで寒くて、という日が続いたこの一週間のある日の風景。来週はまたあたたかそうだけれど・・・。まあ、暑くてやってられないという国もあるわけで、そのくらいは山の天気と言う事でしょうがないと思うべきだろうか。ちなみにこの日は、同僚の車がスタックして、午後にやっとこれた。

 先週はフラメンコ関係のパイロットワークショップをうけにいって、その様子なんかを書こうと思ったのだけれど、なんとなくフワーとしていて、気分的に書く気になれずスキップしてしまった。

 本日は、やっぱりフラメンコ仲間のある人物について書こうかなと思う。とはいっても、私が勝手に書くので、一応匿名になる。Leoと呼ぼうか。彼は、中国系のカナダ人で、フラメンコは長く習っていて、和太鼓も習っているという、ホームドクター。

 ちなみに、ホームドクターというのは、日本ではあまりないけれど、治療とか手当を施すことはほぼなく、定期的な検診のための手配と、処方箋ぐらいは出してくれるし、あとはほぼ、推薦状を書いて、患者をどの専門医に送ればいいかという手配をしてくれるというのが主なお仕事、であっていると思う。一日何人見るかで稼ぎが決まるので、だいたい一人10分とか15分とかの訪問で終わり、次から次へ多くの予約をこなす。

 Leoはだけれど、こう言ってはまったく失礼なのだが、私より背が低くて、10年もやっているというのに、まだビギナーズのクラスで私と一緒にやっているし、リズム感はちょっとにぶいかな、と思わせるような、テクニック的には相当10年歴に見えない。なんだけれど、全く気取らず、一度やったらやり通すべきだと言う事に従って、誰かと比べたり競争したりする感じもなくて、話していてもほっとするようなところがある。言わなければドクターだともわからないほど謙虚なところもいい。服装も、ホントに普通の、サラリーマン?とか、スーツのいらないオフィスで働いているの?と思う、おしゃれの一つもしない飾り気のないジェントルマンなのであった。

 初めてこのビギナーズのクラスメートのみんなでバーレストランのパフォーマンスを見に行こうと言った時のこと。まだLeoのことをあまり知らなかった私は、「こういう人、あまり好きではないな」と思ったことがあった。先に言っておくが、その印象は後からガラッと変わる。それは何かというと、ものすごく「ケチ」だった。カバーチャージを取られてはいるけれど、やっぱりビジネスを営んでいるバーレストランだから、一杯ぐらい頼むのが社会人の礼義かなと思う。しかしLeoはなんだかんだ言い訳して、何も頼まなかった。人のことはほっとけばいいものの、なんか一緒にいて楽しめないかも、と勝手に思ったのだった。

 そしてこれが、私の印象ががらりと変わった出来事。彼には、息子さんが一人いて、その息子さんも何回かフラメンコのクラスに来て私も面識があった。和太鼓はもちろん、その他いろいろ音楽もやっていると言う事で、何にフォーカスしたいか決め中と言う事だったが、どうやらフラメンコ舞踊は違うと思ったようで、その後は全くクラスには来なくなった。

 フラメンコのスチューデントパフォーマンスの日。Leoは、息子さんと来ていた。いつもとは違う、パリッとしたシャツとベストを新調して(?)、フラメンコっぽくしてきたLeoにみんな賞賛していた。

 前回と同じ会場で、バーレストランでのショーだった。このバーレストランの食事は、安くはない。それどころか量は少ないのにチョイ高めかな、と思うもので、ダーリンを誘って初めて来たときだけ、私も一品頼んだけれど、とてもここで夕飯を食べようとは思わない(でもおいしい)。私は当日しっかりお腹を満たしてきてから会場に向かった。しかし、あの、私が勝手に「ケチ」と思ったLeoが、息子さんに好きなものをオーダーさせて彼もいっしょに食べていたのだった。一品どころではなく、ちゃんと充実して食事を楽しんでいたのだった。

 というわけで、自分ひとりでは節制し、息子さんにはひもじい思いをさせないという、素敵なお父さんで、私は頭が下がったのだった。もう本当に、自分の勝手な思い込みと、偏見にまたしても(本当にまたしても・・・)恥ずかしい思いをするのだけれど。

 ただ今、Recaldというギターリスト兼シンガーがメキシコから来ている(というか、どうやらNY滞在中にビザが切れ、ビザの再申請中で一度アメリカ国外に出なくてはならないというのが背景にあるようなのだけれど)、ワークショップをいろいろ開催している。Leoは私の出なかった火曜日の2回続きのワークショップに出席し、一回目を終えたあとだったので、それについて話を聞いた。「オープンレベルと書いてあったけれど、全くアドバンスだったよ。まったく訳が分からないままで終わってしまって、参った参った。次は出るのをやめようと思ったけれど、”一度始めたら最後までやるべきだ” と言うじゃないか。最後までとりあえず終えてみるよ」と、笑顔で話した。

 まー、偉すぎ。私ならとっとと2度目はキャンセルするだろう。

というわけで、またいろいろな人がいて、いろいろなことを学んだ。

 また一週間💛