5ドル:5daller

  一か月ぐらい前になるだろうか。朝車を出そうとエンジンをかけてふと気づいた。

 小さな茶封筒がワイパーに挟まれていた。あれ?と思って車から降りて手に取ると、” A Treat for you”とかかれて、中に$5が入っていたのだった。

 ???なぜ?誰が?としばらくいろいろ考えてみたけれど、仕事の仲間である可能性はないし、やっぱりこのアパートのビルのだれかの仕業としか思えない。とりわけ良いことをした覚えはないというか、あまりそういうことをしたことがない自分だし、これは逆にこれでいいことしなさいよ、と言われているのだろうか、とも考える。

 とにかくこの5ドル、何か良いことに使えればと取ってあるのだけれど、そう思うと意外と難しくて使えない。「あ、これにつかえたらいい!」というアイディアが浮かぶまでは当分神棚(ではないが)にお預けとなり今に至る。

 それにしても、こう言う事、できる人ってすごいと思うのだ。金額の問題ではなく気持ちの問題であろうし、こういうことがいろいろなことに反映するのだと思う。

 

 話はちょっとそれるけれど、どれだけ私がクライアントのGを尊敬しているかというのはこのブログで何度か登場させて伝わっているかもしれない。Gが、見知らぬ人にお金を渡すような精神を持っているというわけではないと思うし、寄付金をして満足するようなタイプではないと思っている。また、ギフトの習慣というのはむしろ日本人によくあることで、欧米人はそれほどでもないから、私が旅行に行ってお土産を持って帰るとビックリされる。しかしGはオープンマインドの人で気取らず、買い物も大好きで、人と違うものを持ちたがり、ベストのものを持ちたがるところはある。それでいていろいろなクラス階層の人と交流をもてる人である。やっぱりオーナー肌で独立心が強く人の下で働くのを嫌うけれど、その代わり人の可能性を信じてその人にやりがいを持たせるようにしてうまく提供する側と受け取る側に利益があるという形にできる人だと思う。また長く働いてくれていた従業員がリタイアするとき、ジュエリーをプレゼントして、それを受け取った彼女はとても喜んでくれたと語っていた。

 

 もっとGの例をあげると、例えば彼女は何十年も同じヘアードレッサーにお願いしている。Covidの渦中はお店が閉まってしまったので、彼女を家に呼んでヘアーの手入れをしてもらっていた。裕福なGだから、よりよいヘアードレッサーを探せばいるだろうに、彼女はこの人に任せる。それでいて、たいてい「あー、もう明日また彼女のところに行かなくちゃだわ。みてこれ。」と不満足な出来であることがよくある。G曰く、「彼女はちゃんとできるのに、だいたい集中力がないのよ。しべりながらやるから時々不注意なの」なんだそうだ。私だったら、できれば他を探したい。だいたいカルガリーで日本人美容師はかぎられており、この値段でこれ?といつも不満な私なのだけれど、カルガリーではあまりチョイスがないと思ってお任せしている方はいる。もちろん、その担当の美容師さんはフレンドリーで若くって、話もいろいろ楽しみながらその時は過ごすし、お会いできてNiceTo Meet You とは思うけれど、やっぱり提供されるサービスに満足することが前提でなくてはならないと、私もよく友人に愚痴をこぼす。

 

 それからGはネイル(足)のケア―も、わざわざ少し遠いところまで行ってその人の家でやってもらっている。もともとネイルサロンでやっていた彼女とは長年の付き合いだし、良心的な値段でやってくれるからというのが理由なのだけれど、それでもやっぱり「あたしは半分リタイアしているけれど、ネイルくらいさっさとやって帰ってきたいのに、彼女はネイル中に3回も息子の電話に出て中断するのよ。」と不満をこぼす。多分次回はダイレクトにそういうことがないようにとお願いするかもしれないGだろうけれど、相変わらず、何があっても別にネイリストを変えたりはしない。

 Gはあまりにも話しやすい人で、つい友人のようにいろいろ話したくなるというのは私もわかるし、なれ合いの中になりがちなのを気を付けなくてはいけないのだけれど、お金を払ってもらっているときは、やっぱりビジネスであることを忘れてはいけないと、私も何度か反省したことはある。

 だいぶ話がずれた。5ドルの行方はどうなるか。なかなか涼しい過ごしやすい日々で。

 また一週間💛