タクシードライバー:Taxi Driver

  写真は今回の内容と全く関係ない、Bristolで見かけた猫☆彡もちろん野良猫ではないのがわかる。野良猫っていうのは、日本はまだ割といるほうだと思うけれど、モロッコでは野良猫も野良犬もうじゃうじゃいた。それに比べると、カナダもイギリスも少ない。ちなみにカナダでは、野良がいたらシェルターにすぐに連れて行くというコントロールをしているのだそう。また、ダーリンからの情報では、トルコでは、いったん連れていかれてすべてワクチンを打ったりしてからまた野良に返すというコントロールをしているのだそう。

 さて、私の住む町からカルガリーの空港へ自力で行くには結構便が悪く、誰かに頼らずに行くとするオプションとしては、空港のパーキングに料金を払って止めておく、レンタカーをして空港で車をドロップオフするという予約を取る(帰りはその反対)、または数少ないようだけれど一応機能しているこの町のタクシーを使って帰りだけカルガリーのUbaを使う、などという選択になる。

 今回はどうしようかと、料金を比べて一番効率よさそうなものを選び、タクシーを始めて使ってみた。往復を予約して、帰りは私のみなとなる。

 当日、タクシーがコンドミディアムまで迎えに来た。ドライバーの彼ときたら、ワクチン強制に反対でショットを受けずマスクもしないという典型的な人で、清潔感が伝わらない。締め切ったタクシーの中で窓を開けてくれたらいいのになと思っていたが、ちょっと寒いかとダーリンも私も何も言わずにいた。ダーリンは意外と潔癖なところがあるので、タクシーから降りた後すぐに手の消毒をしていた。帰りは別の人だといいなと思ったけれど、やっぱり同じだった。

 あらかじめフライトインフォメーションは伝えてあったために、私のフライトが着いた数十分後、イミグレーションのエリアで彼から電話とテキストメッセージが来た。これにはちょっと深いわけがある。

 行きのタクシーの中でドライバーがいろいろ説明してくれた。それによると、コークレン(この町)から空港までお客を乗せていくのは問題ないのだが、カルガリーの法律で、カルガリーシティのタクシー会社以外が空港から客をピックアップするのはイリーガルとなり、そのタクシー会社が罰金を加されるという。

 「僕らはね、空港まで迎えに行くガス料金もかかるけれど、それでもお客さんの需要があれば行くんだ。だから、飛行機が着く時間にこちらからテキストをする。あなたは何を着ているかということをイミグレーションエリアに着いたらテキストしてほしい。タクシーだとわかる車の上のサインはかくして迎えに行く。何色のどんな車かもこちらからテキストで伝えるよ。」ということだった。あら、そんなちょっとドキドキすることするのか、とビックリしたけれど、まあこれが今回の一番の選択だったからしょうがない。

 ロンドンからカルガリー空港に着いて、到着のエリアに現れたドライバー。「後ろでも前でも好きなところに座ってね」と言われたが、前回のブログで書いたように、申し訳ないほど具合が悪く、ワクチンを打っていないこの人に移したら一大事とも思い、マスクはもちろん着用したまま後ろの席に座った。

 ドライブ中は、彼の身の上話をずっと聞いていた。実のお兄さんの一人が2,3日前に亡くなったそうで、原因はいろいろある中お酒の飲み過ぎだという。疎遠になっているために、オンタリオ州にいたお兄さんの葬儀にも病院にも行っていないという。彼は11人兄弟の末っ子だといい、母親は40代で若くして亡くなったのだが、13年間の結婚生活で11年間ずっと妊婦だったという。衝撃的だったのは、食後には歯を磨くということを物心ついてTVのコマーシャルを見るまで知らなかった、ということだった。誰も教えてくれなかったと。そんなこんなで、ウクライナ人のワイフがいて、とても働き者の女性で尊敬していることや、ウクライナ料理の好きなものやあまり好きでないものなどの話もでた。

 そして最後に、こんな風に話せたことは結構助けになったと言ってくれた。いやいや、彼も悪い人ではないことは分かるし、いろいろな苦労があったんだなあと思う。しかし似たような状況のカナディアンはものすごく右派であり、アメリカとの国境をトラックでブロックしたり、オンタリオ州の市内でワクチン強制反対という名目の下、近隣のビジネス妨害や住民への騒音災害を起こした。彼らは結局現在の政府に反対しているだけで、そういうプロテスター達に賛成している人々はマイノリティーではない。

 わざわざメインの道を避けて遠回りして、景色も通りも静かでゆっくりのんびり運転してくれたドライバーには申し訳ないが、具合が悪かった私は「早くつけ」と心の中で祈っていた。

 ワクチンに関してはちょっと不信感や不安感を覚えてきたこの頃なことは前回ちょっと触れたけれど、ヘルスケアーにかかわる職員は一応強制されている。そのせいで、反対者はやむを得ず職を失うというケースに至った。私の勤める施設でも、今まで車いす関係でコンタクトしていたある業者の一人が立ち入り禁止という特例を出されている。以前なら、ワクチンぐらいなぜできないと思っていたほうだけれど、もしかしたら、彼らの選択は(理由はなににせよ)正しかったという結果になる日もあり得る?と思いだした。

 コークラン市内でタクシーを見かけると、あのドライバーが運転しているのに気付くようになる。お仕事があるのは何より。そしてこのような経験もすべて趣のあるものだったように思う。

 特に旅行好きなわけでもないのだけれど、やっぱり旅は経験だし、こんな私のような旅の内容でもいろいろと面白い経験ができるものだと思った。世の中今度はリセッションを迎えるというか、真っ只中という国も多いけれど、そんなのなによ!と乗り越えたいところだが…。

 また一週間💛