本当のジレンマ:The True Dilemma

 写真のやや左下あたりに黒い煙がのぼっているのは、この町のラマダンホテルの火事であった。

 そんな超ローカルな事件はさておき、カナダがずっとアメリカや海外のニュース番組で取り上げられるネタはそうないのだけれど、今回のトラックドライバー達がアメリカとの国境を止めたり、オタワ市のいくつかの通りをブロックしてプロテストを起こしたことは例外となった。

 いろいろなポリティカルな問題や批評はさておき、ほんっとに警察は忍耐強くこの騒動に対処したと思う。マイナス度の寒い外の中で、壁のようにただ立ってバリアをつくる。ってこれを何時間も何時間も、一夜明けても続けた。1時間立っているのだって大変だと思う。トイレにも行けない。お茶も飲めない。

 全く迷惑な騒動だったと思っているのだけれど、結局のところこの人たちは、トルードー主相が率いるリベラル党が気に入らない、典型的なカナダのコンサバティブ派。ワクチンやマスクの自由というのは鼻先だけのことで、トルードー主相の辞任を主張した。自称Freedom Convey のオーガナイザーとやらも、これだけ騒がせておいていざ捕まったあとは、法廷でチャレンジすることもなく静かに家に帰ることになった。チャレンジすれば、彼らに及ぶ罪は今より汚名をかぶる結果となるかもしれないが、彼らの本気度を見せられたのに。騒ぎのあった近所の住人へ犯した、3週間のクラクションの騒音、ビジネス妨害など、他人のフリーダムは気にしない、全くマナーも何もない、本気で何でも「あり」と思っているドリーマーかと思わせる。

 それにしても、法を犯してプロテストしているというのに、バーベキューをしたり、サウナぐらいの温かい部屋をテントでひょいひょいと作ったり、肩まで浸かれる樽のお風呂をほいほいと設置して楽しむ姿など、何不自由なくこの3週間余りを過ごした反対運動なんて見たことない。香港もパリも、プロテストと言えば命がけ、すり傷切り傷以上の負傷を負うのは当たり前ぐらいの覚悟でやっている。日本なら、ハンガーストライキといったところだろうか。

 途中、煙を使った騒動があったが、カナダはライブ中継をしている中、それは警察側ではなくて、プロテスト側の仕業だったと報道。ところが、アメリカのメディアは何か決定的で衝撃的な瞬間をとらえたいと待ち構えているから、これはチャンスと、そういう派手目で荒々しい部分だけをカメラにとらえて、「カナダの警察側から発生した」煙騒動と報道した(ABC)。どちらが真実かと言われれば、予測しかできないから知らないけれど、アメリカのメディアのいい加減さとウソ100発には慣れてきたので、まあそんなところだと思っている。少なくとも、カナダでは、アメリカの銃弾を構えた軍隊がピースフルなプロテスト達に立ち向かうような光景は見せないという態度を貫いたことは共感できる。たとえこれが本当にピースフルだったかという問題と、ダブルスタンダーと言われるように、もしもファーストネーションだったら違った、という意見があるとしても。

 このトラッカーたちは本当にマイノリティーで、多くのカナディアンはこうではない、と思っていたが、大変身近に彼らをサポートして資金を送ったという人もいて驚いた。要するに、コンサバティブ派とリベラル(または左派)という問題になると、カナダは見事に半々に分かれていると思う。それで、コンサバティブ派って結構自分勝手ということがさらにこの一件で明らかになったのではないかと思う。そしてコンサバティブ派はアッパークラスの人々が多いのも特徴だから、この騒ぎは純粋なワーキングクラスの人々の声とは違うということで、全く興味も薄れる、けれどいろいろな人道力やお金もかかってしまった一件となって今なお続いている(周辺の整備や逮捕された人たちの取り調べや処理など)。ご苦労なことよ。

 今週からまた雪でちょい寒さが続く。

 また一週間💛